【基礎】特許出願の必要書類と特許取得までの流れ

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特許や知財と聞くとハードルが高いとお感じの方はまだまだ多いと思います。
どんなことも、知らない間は難しく感じるものです。
私(弁理士:森)も初めはそうでした。

でも安心してください。基礎から学べばそのようなハードルを取り除くことは簡単です。

今回は、「特許出願に必要な書類」「特許出願から特許取得までの手続の流れ」というお話をしたいと思います。
特許出願にどんな書類が必要なのか、そして、出願された発明がどのような旅を経て特許取得に至るのか、ざっくりと解説いたします。

ぜひ一緒に学びましょう!

1.特許出願に必要な書類

発明が特許を受けるためには、特許出願をして、特許庁における審査を経て、特許査定を受ける必要があります。

特許出願には「願書」「特許請求の範囲」「明細書」「要約書」「図面」の5つの書類が必要です。

「願書」には、発明者や出願人の氏名などを記載します。

「特許請求の範囲」には、特許を受けようとする発明を特定する事項を記載します。特許請求の範囲の記載が特許の権利範囲となります。明細書とともに、出願書類のうち最も重要なものです。特許の権利範囲に直結するため、特許請求の範囲の作成は弁理士の腕の見せ所でもあります。

「明細書」には、発明の内容を詳細に記載します。発明の詳細な説明は、同じ技術分野に属する通常の知識を有する者が理解できる程度に明確かつ十分に記載されている必要があります。特許の権利範囲の説明書としての役割を果たすため、特許請求の範囲とともに重要な書類です。

「要約書」には、簡潔に発明全体のポイントを記載します。日本では400字以内という字数制限があります。

「図面」には、発明の内容理解に役立つ図を添付します。見やすい図を添付しておけば、発明の内容を直感的に把握できるため、審査上も役に立つことが多いです。発明の内容によっては必要でない場合もあります。

2.出願から特許取得までの流れ

出願から特許権成立までの流れは以下の図に示す通りです。

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図でお分かり頂けるように、出願すればそれで終わりではなく、特許権成立までには長い旅をすることになります。

以下、各手続について詳しく説明します。

(1)方式審査

方式審査とは、願書や明細書などの出願書類が手続的及び形式的要件を備えているかどうかを審査することをいいます。
方式審査は全ての出願について行われます。方式審査で出願書類に不備があると、補正指令書が送付されます。その場合、出願人は、指定された期間内に補正書を提出して不備を訂正することができます。
専門家に依頼して出願した場合、方式について精査の上出願致しますので、方式審査段階で補正指令書を受けることはほとんどありません。

(2)出願公開

出願日から1年6月経過すると、原則としてすべての特許出願について出願内容が「公開特許公報」に掲載されて一般公開されます。
これを出願公開といいます。
公開によって、特許出願した技術内容が世間に開示されます。
第三者は、公開特許公報を技術文献として参照できるようになります。

(3)出願審査請求

特許出願の実体審査を開始するには、出願日から3年以内出願審査請求を行う必要があります。
3年以内に出願審査請求がなされなかった出願は取り下げたものとみなされます。
出願審査請求は、出願審査請求書を提出するとともに、所定の手数料を納付して行います。
一定の条件を満たす出願人(小規模企業、研究開発型中小企業、大学等)に対しては、手数料を免除又は軽減する制度もあります。

(4)実体審査

方式審査をクリアして、出願審査請求がなされた出願は実体審査が行われます。
実体審査では、審査官が、出願された発明が特許要件を満たすか否か等、その出願を拒絶すべき理由(拒絶理由)があるか否かを調べます。審査の最重要部分と言えます。

審査の結果、拒絶理由が発見されなかった場合には、「特許査定」がなされます。

一方、拒絶理由が発見された場合、いきなり「拒絶査定」をするのではなく、まず出願人に拒絶理由を明記した拒絶理由通知書を送付して出願人の意見を聞きます。

実務では、特許出願をすると、最低1回は拒絶理由通知書を受ける場合が多いです。

拒絶理由通知を受けた出願人は、所定の期間内に意見書を提出して反論を行ったり、手続補正書を提出して特許を受けようとする発明の範囲を修正したりすることで、拒絶理由の解消に努めます。

補正によって発明の範囲を修正する場合、出願当初の明細書又は図面に記載された事項の範囲内で行わなければならないという制限があります。補正をする場合には新規事項を追加することはできません。そのため、出願当初の明細書に十分に発明の特徴を開示しておくことがとても重要です。

審査官が、提出された意見書や手続補正書を見て、拒絶理由が解消したと判断したときは「特許査定」となりますが、依然として拒絶理由が解消していないと判断したときは「拒絶査定」となります。

意見書、手続補正書をうまく作成して審査官に発明の利点を理解して頂くことも、弁理士の腕の見せ所と言えます。

拒絶理由が解消せず「拒絶査定」が出された場合、不服がある場合には審判を請求して拒絶査定の是非について争うことになります。

一方、「特許査定」の謄本が送達された場合には、その後、出願人が特許料を納付すると、特許権の設定登録がされ、晴れて特許権が発生します。特許公報も発行されます。

3.まとめ

今日の記事のまとめです。

特許出願には「願書」「特許請求の範囲」「明細書」「要約書」「図面」の5つの書類が必要。

・特許出願をしてもそのままでは実体審査は開始されず、出願日から3年以内に出願審査請求を行う必要がある。

・実体審査の結果、拒絶理由が発見されなかった場合、「特許査定」が出される。その後特許料を納付することで、晴れて特許権が発生する。

実体審査の結果、拒絶理由が発見された場合、拒絶理由通知が発行される。

・拒絶理由通知が発行された場合、意見書、手続補正書を提出することで、拒絶理由が解消すれば特許査定を得ることができる。

・ただし、補正によって発明の範囲を修正する場合、出願当初の明細書又は図面に記載された事項の範囲内で行わなければならないという制限がある。

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(本記事は、初学者向けに分かり易さを優先して記載いたしました。そのため、実際の法律等の表現と一部異なる場合がございますことをご承知おきください。)
(本記事の概略版は、中部経済新聞2020年11月12日号に掲載されております。そちらもご参照ください。)

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