【基礎】特許ってどんな制度?

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特許、と聞くと「ハードルが高いのでは?」と感じる方はまだまだ多いと思います。
実際に、お客様の中に、特許や知財へのハードルを感じておられる方も多いと実感しています。
どんなことでも、知らない間は難しく感じると思います。
私(弁理士:森)も初めはそうでした。

でも安心してください。基礎から学べばそういうハードルを取り除くことは簡単です。
ぜひ一緒に学びましょう!
知財の知識を身に着けて頂き、皆さまの事業を一歩先に進めて頂けるお手伝いになれば幸いです。

今回は、「特許ってどんな制度?」というお話と、「特許って何を保護するの?」というお話をしたいと思います。


1.特許ってどんな制度? ~特許制度の概要~

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【図】特許制度のイメージ

「特許」とは、ひとことで言うと「発明」を保護するための制度です。
特許制度は、発明をした者に対して国が一定期間その技術を独占実施できる権利(特許権)を与えて発明を保護・奨励するとともに、発明の内容を公開して発明の利用を促進し、産業の発達に寄与することを目的とする制度です。

大事なところですので少し丁寧に説明します。
特許制度では、苦労して新発明をした発明者に対して、発明内容の公開を代償として特許権を与えることで、その発明者に一定期間その技術を独占実施する許可を与えています。発明者は、苦労して開発した技術を他社にマネされずに独占実施できることで、発明に要した投資を回収することができます。独占実施が確保されることで、発明者は開発のモチベーションを高く保つことができます。「どうせマネされるから開発してもムダだよ!」となりにくくなります。
一方、特許制度では、特許出願された発明の内容は世に公開されます。
発明内容が公開されれば、それを見た第三者は、公開された発明を勉強して更なる改良発明の研究などに利用することができます。発明の利用が促進され、「あの会社の技術の先を行ってやろう!」と技術競争が生まれ、我が国の産業の発達につながることになります。

発明が特許としての保護を受けるためには、まず、発明の内容を記載した書類を特許庁に提出して特許出願をする必要があります。
その後、特許庁で、出願された発明が特許となるための要件(特許要件)を満たしているのかを審査し、特許要件を満たしていると判断されると、特許査定がされます。
なお、特許出願を行うと、特許査定がされるか否かに関わらず、原則として1年6か月後にはその発明の内容が世に公開されます。

特許査定がされ、所定の特許料を納付すると、出願した発明についての特許権が発生します。特許権者は、特許発明を自ら実施する権利を専有することができます(独占的に実施できます)。

特許権は、原則として出願の日から20年間存続します。期間満了後は、特許権が消滅し、誰もがその発明を自由に利用できるようになります。

2.保護対象は「発明」です ~特許法上の「発明」って何?~

(1)発明とは

上記の通り特許法の保護対象は「発明」です。
特許法では、発明は「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの」と定義されています。
パッとそう言われてもイメージしにくいと思いますので、順番に解説します。

<自然法則の利用>

「自然法則」とは、自然界において経験的に見出される科学的な法則を言います。従って、計算方法やゲームのルールのような人為的な取り決めや、永久機関のように自然法則に反するものは発明には該当しません。
また、万有引力の法則のような自然法則そのものも、自然法則を利用していないため、単なる発見であって発明には該当しません。

<技術的思想>

「技術」とは、一定の目的を達成するための具体的手段です。実際に利用でき、知識として伝達できるものをいい、個人の熟練によって得られる技能とは異なります。
従って、フォークボールの投球方法のような技能や、絵画・彫刻などの美的創作物などは発明には該当しません。

<創作>

「創作」とは、新しいことを創り出すことをいい、単なる「発見」とは区別されます。従って、天然物の単なる発見などは「発明」には該当しません。

<高度>

発明は、自然法則を利用した技術的創作であっても「高度」でなければなりません。
ここで言う「高度」は、従来にない新しい機能や優れた効果を発揮できる程度でよく、改良品でも立派な特許になります。

一方、実用新案登録の対象である「考案」は、高度でなくてもよいとされています。
(ただ、実務上はこの「高度」の程度が問題となることは少ないため、それほどこだわる必要はないと思います)

(2)発明の種類

また、発明は、「物の発明」と「方法の発明」に分類され、カテゴリごとに特許権の効力が及ぶ「実施」行為の内容に差があります。

「物の発明」は、発明が物品に具現化されたものであり、経時的要素を含みません。特許法では、プログラムの発明も物の発明に含まれます。物の発明では、その物の生産、使用、譲渡等の各行為が「実施」に該当します。

「方法の発明」は、発明の内容に経時的要素(順序、時間など)を含みます。方法の発明では、その方法を使用する行為が「実施」に該当します。

一方、実用新案登録の対象である「考案」は、物品に係るもののみを対象とし、方法に係るものを対象としていません。

なお、よく話題になるビジネスモデル(ビジネス方法)特許は、コンピュータ等のハードウェアに絡めて実現される等の一定の条件を満たす場合に、発明として扱われます。

3.まとめ

今日の記事のまとめです。

・特許制度=発明を保護する制度。

・発明者(特許権者)・・・特許をとることで、苦労して開発した技術を一定期間独占的に実施できるため、開発の投資を回収できる。モチベーションが高まる。
・第三者・・・公開された発明を利用することができる。結果的に産業の発達に寄与。

・特許の保護対象=発明。「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」。

森国際特許事務所では、特許に関するご相談をお待ちしております。

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(本記事は、初学者向けに分かり易さを優先して記載いたしました。そのため、実際の法律等の表現と一部異なる場合がございますことをご承知おきください。)
(本記事の概略版は、中部経済新聞2020年9月10日号に掲載されております。そちらもご参照ください。)