【意匠】新規性喪失の例外適用が受けやすくなりました【法改正】

法改正(2023年6月公布)が施行されたことにより、2024年1月1日以降の意匠登録出願において、新規性喪失の例外の適用のための手続的要件が緩和されました。

これにより、2024年1月1日以降の意匠登録出願では、新規性喪失の例外の適用が以前より受けやすくなります。

意匠登録出願において、新規性喪失の例外適用を受けるためには、以下の①~③の要件を満たす必要があります。
①新規性を失った日(意匠を公開した日)から1年以内に意匠登録出願がされていること
②意匠登録出願と同時に新規性喪失の例外の適用を受けようとする旨を記載した書面が提出されていること(※注:通常、願書にその旨を記載します)
③出願日から30日以内に、公開行為について証明書を提出すること

今回、③の要件について改正が行われました。

従前の制度では、出願人は、自身が行った“全ての公開行為”について証明書を作成して提出する必要がありました。
しかしながら、全ての公開行為について30日以内に証明書を準備することは出願人の負担が大きく、従前の制度下では新規性喪失の例外適用のハードルが高くなっていました。

今回の改正により意匠法4条3項が改正され、2024年1月1日以後の出願については、同一意匠を複数回に渡って公開した場合や、類似関係にある複数の意匠を同日又は異日にそれぞれ公開した場合、「最先の公開の日の」、「いずれかの公開行為」について証明書を提出すれば、それ以後の公開行為については証明書を提出する必要がなくなりました。

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(特許庁ホームページより引用)

そのため、例えば、同一の意匠を動画サイトやSNSなどの異なるプラットフォームで複数回に亘って公開するような場合であっても、「最先の公開の日の」、「いずれかの公開行為」について証明書を提出すれば、それ以後の公開行為については証明書を提出しなくてもよいことになります。

また、最先の公開意匠の色違いの意匠、細部にマイナーチェンジを加えた意匠等を公開した場合も、「最先の公開の日の」、「いずれかの公開行為」について証明書を提出すれば、それ以後の公開行為については証明書を提出しなくてもよいことになります。

(※ただ、各公開意匠が最先の公開意匠と類似する必要がありますので、証明書の提出を省略可能かは個別に検討した方がよいと思います)

今回の改正で証明書の準備負担が小さくなることで、新規性喪失の例外適用のハードルが下がったと言えます。

とはいえ、新規性喪失の例外はあくまで例外規定です。
第三者が同じ意匠を独自に創作して先に出願していた場合等には、意匠権を取得できないことになります。
従前と同様に、新規性を喪失する前に意匠登録出願を済ませておくことが好ましいことは今後も同様です。
是非ご留意ください。

詳細については、特許庁の以下のウェブサイトをご参照ください。

「意匠の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための手続について(出願前にデザインを公開した場合の手続について)」
https://www.jpo.go.jp/system/design/shutugan/tetuzuki/ishou-reigai-tetsuduki/index.html